相続空き家3,000万控除の条件は?耐震基準適合証明書の費用と売却戦略
相続空き家3,000万控除の条件は?耐震基準適合証明書の費用と売却戦略

昭和56年5月以前に建てられた実家を相続した方から、こんな相談をよく受けます。「空き家控除が使えると聞いたのに、耐震補強が必要と言われた。結局いくらかかるの?補強する価値はあるの?」という声です。
この疑問への回答は一つではありません。物件の状態、売却価格、補強費用、買主の状況によって「得な出口」は変わります。本記事では制度の基本を押さえながら、売主が本当に知るべき意思決定のロジックを整理します。
「昭和56年5月31日以前」の意味と旧耐震の判定
相続空き家の譲渡所得3,000万円特別控除(以下、相続空き家特例)の適用要件のひとつに、「昭和56年5月31日以前に建築された家屋」という条件があります。これが、1981年(昭和56年)の建築基準法施行令改正で定められた新耐震基準の施行前、いわゆる旧耐震基準の適用物件を指します。
「建築された」の判定基準は何か
実務上よく混乱するのが、この日付の意味です。正確には「昭和56年5月31日以前に建築工事に着手したか」が基準です。確認済証(建築確認通知書)の確認日が昭和56年5月31日以前であれば要件を満たします。また、登記上の新築年月日が昭和56年6月以降であっても、建築請負契約書など着工時期を証明できる書類があれば適用対象になります。
確認日の証明には、以下の書類が使われます。
・建築確認通知書(確認済証):一番確実な証明書類
・台帳記載事項証明書:確認通知書が紛失した場合、各自治体の建築指導課が発行
・登記事項証明書(表題部の「新築年月日」):補助的に使用されることがあるが、竣工日であるため厳密には確認日とは異なる
書類が手元にない場合でも、台帳記載事項証明を市区町村窓口で取得できるケースが多いです。ただし、古い建物ほど台帳そのものが残っていないケースもあるため、早めに確認することを推奨します。
増築がある場合の扱い
昭和56年6月以降に増築が行われた場合、増築部分は新耐震基準の適用対象になります。一方で、「元の建物が旧耐震かどうか」は元の部分の確認日で判断します。ただし、増築によって建物全体の構造が変更された場合は判断が複雑になるため、建築士への確認が必要です。
「うちの物件は対象になる?」と気になった方へ
書類の見方や日付の判定など、少しでも迷う点があればお気軽にご相談ください。板橋区・川越市の物件事情に精通したプロが、LINEで初期判定をサポートします。
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相続空き家特例の適用要件と耐震基準のハードル
相続空き家特例の概要を整理します。相続または遺贈により取得した被相続人の居住用家屋(および敷地)を一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です(相続人が3人以上の場合は2,000万円)。
空き家特例の主な適用要件
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
・相続開始の直前において、被相続人(亡くなった方)以外に居住していた人がいなかったこと
・相続開始の直前まで被相続人が居住していたこと(老人ホーム入所の場合は別途要件あり)
・相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
・売却価格が1億円以下であること
旧耐震物件が引っかかる条件
上記のうち、旧耐震物件の場合に「耐震基準を満たすこと」という要件が課されます。具体的には次のいずれかを満たす必要があります。
1. 売却時に耐震基準適合証明書を取得していること
2. 建物を解体して更地の状態で売却すること
3. (2024年改正) 売却後に買主が一定期間内に耐震改修または解体を行うこと
ただし、3.については後述するように契約実務上のリスクがあります。
耐震基準適合証明書とは何か、費用と取得の壁
耐震基準適合証明書は、建築士または指定機関が現地調査を行い、「現行の耐震基準(新耐震基準)を満たす」と判断した場合に発行される証明書です。

証明書を取得するための費用目安
| 項目 | 費用目安 |
| 耐震診断費用 | 10〜20万円程度 |
| 証明書発行手数料 | 3〜5万円程度 |
| 耐震補強工事(必要な場合) | 100〜200万円以上 |
旧耐震の木造住宅では、診断の結果「補強なしでは証明書が出ない」ケースが大半です。特に、筋交いの不足・基礎の劣化・屋根の重さといった問題は、築40年以上の建物で頻出します。
証明書が出やすい家と出にくい家
証明書が出やすい条件:壁量が比較的多い間取り(部屋数が多く区切られている)、軽い屋根材(金属板葺きなど)、増築や改造が少ない、過去にリフォームで補強された形跡がある。
証明書が出にくい条件:大きな吹き抜けや広間がある、重い瓦屋根、基礎が無筋コンクリートや石積み、雨漏りやシロアリによる腐食がある。
証明書が「出るかどうか」は、診断してみなければわかりません。ただし、診断費用(10〜20万円)をかけた上で「補強が必要」と判明するケースも多く、費用回収の見通しを持った上で動く必要があります。
空き家特例の「4つの出口」:手残りを最大化させる選択肢の比較
空き家特例を適用するための出口は、大きく4パターンあります。どれが最も得かは、物件の状態と市場価格によって異なります。

特例適用の4パターン比較表(費用・リスク・手残り)
| 出口 | 特例適用 | 費用目安 | 主なリスク |
| ①売主が耐震補強して証明書取得 | 適用可 |
補強費100〜200万円以上 |
補強費が控除額を超える可能性 |
| ②買主が改修前提で現況売却 (売却後改修) |
適用可(条件付き) | 売主負担少 | 買主が工事しなかった場合のリスク |
| ③解体して更地で売却 | 適用可 | 解体費100〜200万円程度 | 解体費負担・更地化による固定資産税増 |
| ④控除を使わず現況売却 | 非適用 | 最小 | 税負担が発生する |
「控除を使う=正解」とは限らない?費用対効果で選ぶべき理由
控除を使うことが常に最適解とは限りません。たとえば、売却価格が低く譲渡所得がほとんど発生しない場合(取得費+譲渡費用が売却価格に近い場合)、控除のために補強工事・解体費用をかけると、かえって手残りが減ります。
税理士に試算を依頼し、「控除を使った場合の手残り」と「使わなかった場合の手残り」を比べることが先決です。
「売ると決めなくていい。まずは現状の物件がどんな条件で売れるかを確認したい」という方に向けて、無料の現状確認からお受けしています。
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2024年改正「売却後に買主が工事」スキームの注意点
2024年の税制改正により、売主が耐震補強せずに旧耐震のまま売却しても、買主が一定期間内に耐震改修または解体を行えば特例を適用できるようになりました。
しかし、この「売却後買主工事」スキームには、実務上のリスクがあります。
買主が工事しなかった場合
売主が特例を申告した後に、買主が工事期間内に改修・解体を完了しなかった場合、売主の申告が否認されるリスクがあります。これは売主にとって後から追徴課税が発生する可能性を意味します。
契約書に入れるべき事項
このスキームで売買を進める場合、売買契約書または特約に次の内容を盛り込むことが必要です。
・買主が工事を行う旨の義務規定
・工事完了の期限(売却翌年2月15日まで)
・工事完了報告書・証明書の売主への提出義務
・工事未完了時の売主への通知義務
売主の立場からすると、「契約後に追いかけ続けなければならない」という負担が残ります。買主との信頼関係と価格条件を見極めた上で選択する必要があります。
損をしないための3ステップ|旧耐震物件売却の「正しい相談順序」
旧耐震物件の売却で失敗する多くのケースは、「専門家に相談する順番を間違えた」ことに起因します。推奨する順番は次のとおりです。

Step 1:不動産会社に査定依頼
まず、現況(耐震補強なし・解体なし)での売却価格の見当をつけます。市場価格がわからないと、補強費や解体費をかける価値があるかどうかの判断ができません。
Step 2:税理士に試算依頼
査定価格をもとに、「控除を使った場合の税額・手残り」と「使わなかった場合の税額・手残り」を試算してもらいます。
Step 3:建築士に耐震診断依頼
補強が必要と判断された場合のみ、建築士に耐震診断を依頼します。診断結果と費用見積もりをもとに、①〜④の出口を最終決定します。
この順番を守ることで、「診断してみたら補強費が割に合わなかった」という無駄な費用支出を避けられます。
「どの出口が自分にとって得なのか、一度整理して話を聞きたい」という方は、売却査定と合わせてご相談ください。税理士・建築士との連携が必要な場合のご紹介も可能です。
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【監修者より】代表・川野元基からのメッセージ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
株式会社カラーズハウス代表の川野元基です。
旧耐震物件の相談で最も多い失敗パターンは、「とりあえず耐震補強の見積もりを取った」という動き方です。補強工事会社に相談すると、工事を勧める方向でアドバイスが出やすい。それ自体は悪意がなくても、売主にとって最適な出口とは限りません。
私がまず確認するのは、「この物件で譲渡所得がどれくらい発生するか」です。取得費(親御さんが買った当時の価格、不明なら売却価格の5%)と売却価格の差が小さければ、控除そのものの効果が薄く、補強費や解体費をかけない方が手残りが多いケースもあります。
板橋区・川越市で扱ってきた旧耐震物件には、証明書が取れた物件も、取れなかった物件も、更地売却が最善だった物件も、控除を捨てて早期売却した物件もあります。それぞれに「その物件なりの最適解」があります。まずは一度、現状を聞かせてください。
売ると決めなくても構いません。「うちの物件はどの出口が合うか」を確認するだけでも、ぜひご相談ください。
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株式会社カラーズハウス 代表取締役
川野 元基(かわの げんき)
プロフィール・保有資格:
株式会社カラーズハウス 代表取締役
センチュリー21フランチャイズ加盟店 在籍12年
全国不動産売却安全取引協会認定「おうち売却の達人」
NPO法人不動産売却SOS相談センター 元相談員
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士
1級建物アドバイザー / ホームステージャー2級
不動産写真マイスター
著書
メディア掲載
